1970年から直近までの推移から見る少子化の原因と結婚との関係を整理してみる

少子化が進行している、と言われているのは周知の通り。と同時に語られるのは結婚の話。

 

断片的な数値は見るものの、少子化に関する全般的な傾向や、何が原因で、どのような経緯で現状があるのか、

また、婚姻と少子化の関係がどうなっているのか等を

まとめたものをあまり見たことがなかった。

 

そこで、冷静にどうなっているのかを整理してみたいという私自身の興味を出発点として、政府統計などをもとに一度情報を整理してみた。

 

1970年前後をスタートとしているのは2つの理由がある。

 

1.本ブログの話の軸となる期間合計特殊出生率が減少をはじめるタイミングであること。

2.日本の産業構成が現在につながる形に変化したタイミングであること。

つまり、農林漁業者の減少と雇用者の増加が起こった時期である。

(第3次産業従事者の増加)

 

はじめに、期間合計特殊出生率と出生数の経年変化を見る。

 

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厚生労働省の「人口動態統計」より、

人口の自然増と自然減との境目はおよそ2.07とされており、

これを戦後はじめて割ったのが1974年の2.05。

それ以降は2005年に最小の1.26を2015年は1.45となっている。

このグラフから人口の自然減の傾向はすでに1970年代前半から見られたことを示している。

また、現在、出生数は100万人程度。

 

少子化」は1990年の「1.57ショック」を契機に、問題化した。

1.57ショックは、それまでの最低合計特殊出生率だった1966年丙午(ひのえうま) の 1.58を下回ったことにより起こった。

(当時は丙午(ひのえうま)年に生まれた女性は気が強く、夫を食い殺すという迷信があった。)

 

 

期間(1年間)合計特殊出生率は、

女性が出産可能な年齢を15歳から49歳までと規定。

それぞれの年齢でのその年の出生率を足し合わせることで、

人口構成の偏りを排除し、一人の女性が一生に産む子どもの数の平均を求めている。

年次比較、国際比較、地域比較に用いられている。

(より正確にはコーホート合計特殊出生率だが、その世代が50歳になるまで得られない。)

 

つまり 期間合計特殊出生率とは、1年間の出生数をもとに、

その国の1人の女性が生涯に産む子どもの数を仮に求めたものとなる。

 

 

別の視点から見ると、期間合計特殊出生率は、

15歳から49歳までの女性全員の中で1人以上子どもを産む割合(母親数)

× 

1人以上子どもを生む母親の1人あたりの平均出生児数

と類似の指標となるはずだ。

要因を探るためにこのように分解して考えている。

 

②1人以上子どもを生む母親の1人あたりの平均出生児数について、

 

国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」の

『夫婦の完結出生児数』*1(結婚持続期間が15~19年の夫婦の平均出生子ども数)で

確認する。

0人を除いた数値は当ブログにて作成している。

 

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0人を除いた夫婦の完結出生児数は、2015年で2.08となっている。1972年の2.33から減少しているが、ほぼ自然増減の境目だ。(1972年比で89%)

子ども2人が最頻値でいまだに5割を超える。

 

経年の傾向から、子ども0人、1人が増えており、

全体の夫婦の完結出生児数は2015年で1.94と2を割っている。

 

これらの要因を考えると1つには、子どもを持つことに対する考え方の変化がある。

1992年からのデータになるが、「出生動向基本調査」によると「結婚したら、子どもは持つべきだ」はまったく賛成は92年の46.9%から2015年は12.3%と激減している。

 

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また、子どもの数について、「出生動向基本調査」によると平均理想子ども数と平均予定子ども数の経年は以下の通り。

 

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さらに予定子ども数と、理想子ども数との差の理由を見る。

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予定より理想人数を多くの回答したのが予定1人(理想2人以上)だ。

これは理想人数の平均が2.32人を反映しており、予定1人の人は2人以上生みたいという欲求が高いことを示している。

(とは言え予定1人は全体の14.7%に留まる)

 

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理想2人以上 予定1人の理想より予定が下回る理由トップ3は以下の通り。

1位.子育てや教育にお金がかかりすぎるから

2位.高年齢で生むのはいやだから

3位.欲しいけれどもできないから

 

これらが要因としてあげられるかを検証する。

 

①お金について

総務省の「家計調査」から

1世帯当たり年平均1か月間の収入と支出(勤労者世帯_2人以上の非農林漁家世帯)を

見ると、

実収入・消費支出に対する教育関係費の割合は以下の通り。

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1970年から2000年まで増加を続けるも、

2000年以降はほぼ同率となっている。

2000年以降は若干ではあるが、合計特殊出生率は上昇している。

 

②年齢に関して

厚生労働省「人口動態統計」から

2014年では平均初婚年齢が29.4歳、第1子出産時の年齢は30.6歳と1975年から約5歳上昇している。

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また、上記の「少子化」の話の中に、唐突に「夫婦」の話が出てきたので、ここで一度「子ども」と「婚姻」の関係を整理する。

 

厚生労働省の「人口動態統計特殊報告 出生に関する統計」によると、

嫡出出生率は、1970年で99.1%、2014年で97.7%となっており、

日本の子どもはほぼ婚姻関係にある夫婦から生まれている。

このことから現状では、「夫婦」による調査から少子化に関する情報を得ることに一定の妥当性があると考えられる。

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ここまでのまとめ

  1. 合計特殊出生率は2005年の1.26から2015年は1.45へと上昇。ただ、2.07は遠い。
  2. 一方出生数は減少し、約100万人に。
  3. 1人以上子どもを生む母親の1人あたりの平均出生児数2015年で2.08人。
    (1972年比で89%)
  4. 理想の子ども人数は2.32人。
  5. 夫婦の子ども数は多くは2人だが、0人・1人が増加傾向。
  6. 子どもを持たない理由は、
    (1)「結婚したら、子どもは持つべき」という考えの減少
    (2)初婚・出産時の年齢の上昇
  7. 日本の出生数における嫡出出生率は97.7%

 

次回は①15歳から49歳までの女性全員の中で1人以上子どもを産む人数について整理してみる。

*1:※完結出生児数とは、夫婦が結婚後、十分に時間が経過して、もはや子どもを生まなくなった時点の子ども数のこと。日本の場合、結婚から15年を経過すると追加出生がほとんどみられなくなるため、結婚持続期間15~19年の夫婦の平均出生児数を国立社会保障・人口問題研究所が完結出生児数としている。